部長-齋藤洋典-
「山下白雨」
合格おめでとう。
今あなたは、多くの合格者と同じように、現在から過去を振り返り、
これからの大学生活での未来を思い描こうとしていることでしょう。
しかし、問題はあなたの思い描く未来が、心の底からあなたが描きたかった未来かどうかです。
あなたは、大学生活への甘美な夢と苦い現実との狭間に生まれる葛藤
気づいているかもしれない。なぜなら理想と現実との落差に生まれる葛藤は、
今に始まったことではないからです。それは大学生活で終るとも思えない。
むしろ人の葛藤は一生にわたる試練なのかもしれない。
だとすれば、この葛藤のパズルを解く鍵はどこにあるのか。一幅の絵にそのヒントを求めてみよう。
凱風快晴(がいふうかいせい)は、葛飾北斎の手に成る富嶽三十六景の代表作であり、
「赤富士」と呼ばれ広く親しまれている。だが,この快晴のもとに描かれた静的な赤富士に、
今回のパズルを解く鍵はない。これに対して、山下白雨は「黒富士」と呼ばれ構図が動的である。
その富士には積乱雲が立ち、裾野は黒雲に覆われ、稲妻が走り、大地は躍動する。
山麓は漆黒の闇に包まれ、炸裂する稲妻に、驟雨(しゅうう)が樹木を洗う。
ところが、裾野の上の積乱雲の彼方に目を移すと快晴に泰然と立つ富士の頂が描かれていることに気づく。
雷電の下を右往左往するのか、快晴の富士を想うのか、さらにその上の超高層に描かれた藍の一文字に
目を遣(や)るのか、器量が問われるところである。
葛藤のパズルは、去に慣れ親しんだ私たちの視点、特に一方向から注がれる視線に深く根ざしている。
安全無事を願うそのまなざしの偏りに不備があると言っているのではない。
問題の根幹は、現在に縛られた未来像だけでは、理想と現実のせめぎあいに生まれる
葛藤のパズルを解けない点にある。裾野の動乱の行方を知るヒントは、
超高層に広がる藍色の空からのまなざしにある。
名古屋大学アメリカンフットボール部では、100名を超える部員が、
東海学生フットボールリーグの頂に迫り、さらにその頂の先を見ようとしている。
そのために私たちは、現在から未来へのまなざしと、未来から現在へのまなざしを追求している。
その双方向のまなざしの交わりに、あなたの未来が変わる。
その変化を学ぶ機会がグランパスにはある。ただあなたが望みさえすれば。